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はだかぎ

裸木

豊島 与志雄

「新潮」1926(大正15)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,049 字 · 33 页

青空文庫

真裸で一人つっ立ってるような、肌寒い感じだった。

門をはいって、締りをして、家にはいろうとすると彼はびっくりした。遅い折にはいつも引寄せてある玄関の戸が、一枚開け放したままだった。

更に彼がびっくりしたことには座敷に電燈がついていて、それに黒い布の覆いがされて、ぼうっとした中に、敏子が端然と坐っていた、子供が真赤な顔で眠っていた。

「どうしたんだい。」

玄関に出迎える筈なのを、敏子は坐ったまま、冷い一瞥で彼を迎えた。そしてそのままの眼付で、子供の方を指し示した。

「え、病気か。」

水枕の上の頭が、かっとした、底力のある粘っこい熱さだった。それと変に不調和に、不気味なほどに、安らかな静かな息使いだった。そして昏々と眠っていた。小皺の多い唇が乾いていた。

夕方まで元気だったのが、八時頃から、俄に燃えるように熱くなって、ぐったりしてしまった。三十九度三分の熱だった。医者が来た。神経性の発作的な熱かも知れないが、も少し経過を見なければよく分らない、そう云って、透明な水薬をくれた。一切乳を与えないで、渇く時にはその水薬をやるのだそうだった。――敏子は低い声で、棒切のような話方をした。