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らしんのにょせん

裸身の女仙

野村 胡堂

「朝日」1932(昭和7)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,437 字 · 29 页

青空文庫

「これは、御新造様の絵姿じゃ御座いませんか、何うしてこんなところに――」

お石はあまりの事に眼を丸くして、釘付けになって了いました。油絵などは、切支丹の踏絵より外には見ることの無い時代、茶店の店先に、鏡に映したような、お鳥の肖像があったのですから、これに驚かなければ何うかして居ります。

「石、其処の店で訊いておくれ、これは何うした絵で御座いましょうか――って」

「気味が悪う御座いますネ、御新造様」

「それじゃ私が訊いて見よう」

「あれ、そんな積りじゃ御座いません」

お石が入って訊くまでもありませんでした。お鳥の変った顔形を見ると、茶店の婆アは心得顔に、

「御新造様、お鳥様と仰しゃいましたな。萩江様が十日も前から毎日毎日お待ち兼ねで御座います」と、奥を指さします。

「お石、ほんの暫らく此処で待っておくれ、誰か知ってる人が見えたらそっと教えてくれるように」

「宜しゅう御座いますとも、御新造様」

心得顔なお石を店に残して、お鳥は茶店の老女の案内するまま、薄暗い別間へ通りました。

「漸っとお見えになりました、旦那様」

「お、それは有難い」

婆アの声につれて、窓際から身を起したのは、二十八九の立派な武士、越後上布に、白博多の帯、一刀を提げて起つと、長押に髷の刷毛先が届きそうな堂々たる体躯で、浅黒い顔は日焦けのせいでしょう、にっこり