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かっしょくのぐどう

褐色の求道

岡本 かの子

「宗教公論」1935(昭和10)年2、3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,065 字 · 14 页

青空文庫

宗祖には他に弟子も無いのだからダルケの宗門は断絶し、今はこの寺だけが遺身にのこっているわけである。少し離れて建っている斎戒沐浴のため使ったという浴堂のまわりに木の葉が佗しく掃き積っていた。

宗祖が東洋の事にあまり明るくなかった証拠は寺の建物の趣きにも知られる。それは印度風でもなし、支那風でもなし、人によっては回教の寺とも思わしめるほど、およそ東洋の寺院とは縁遠い様式である。数寄の者の建てたエキゾチックな別荘――一口に斯う言ってしまった方が早いようである。従って中にある什具も国籍不明のちぐはぐなもので、数も少ない。ただ本堂と覚しき多角形の広間の、ひと側の中央に漢字で彫った法句経の石碑が床の上に屹立して礼拝の標的を示している。この部屋は、光線の取り方も苦心をして幽邃を漂わせているから、此処こそ参詣者の額ずく場所と、私も合点して合掌したのであった。

そんなわけで私は失望しながら、日本人の名前の沢山書いてある参詣者記念名簿に私も義務だけにペンで名前を書入れて帰った。

寺は気に入らなかった。然し町は気に入った。名も無いフロウナウの町は平凡そのもののようであった。