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せいこのしじん
西湖の屍人
海野 十三
「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页
彼等は外へ宿をとるという風もなく、カフェ・ドラゴンに寝泊りするようになり、王は毎日外出して夜遅く帰って来る。一方マリ子と呼ぶ少女は、ドラゴンの女給となったのだった。
そんなことは、漢青年にとって大した問題ではなかった。困ったのは、孫の鼻息が、急に荒くなったことだった。彼はことごとに文句を云った。そうかと思うと、彼は数回に亙って、心霊実験会へひっぱって行った。そこで、漢青年はいく人となく、死んだ知友の霊と話をした「死後の世界」というものが、なんだか実在するように感ぜられて来たのだった。
漢青年は「死」という問題に、段々と恐怖を覚えずには居られなかった。人間は、死んだ後でも、死んだことを意識しないでいるものだということが、心霊実験会の多くの実例によって、判ってきたのだった。そのことは一層、漢青年を脅かした。彼は、京浜国道を六十哩のスピードで走っていて、時々通行人を轢いたり、荷車に衝突して自分も相当の怪我をしたことが何回もあったことを顧みて慄然とした。ひょっとすると、あのうちのどの事件かで以て、自分は既に死んでしまったのではなかったか。
そうした不安が、心の片隅に咲きだすと、見る見るうちに空を蔽う嵐雲のように拡がっていった。