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せいこのしじん

西湖の屍人

海野 十三

「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页

青空文庫

それとも太陽が、突如として消滅し、世界が真暗闇に皎ったのかとも思った。

「ドドドーン」

という音響をきいたと思った。

漢青年は、ハッと気がついた。

「今夜の停電というのが、これだ。そしてこれには、何か根本的の誤謬がある!」

彼は持っていたニッケルの文鎮を、ヤッと天井と思われる方向めがけて、投げあげた。

ガラガラと、硝子天井が崩れる音がした。

その途端に、パッと明るくなった。

二度目の奇蹟! 太陽は再び珊々たる光線を硝子天井の上に降りそそいだ。

「畜生! こんなカラクリに、ひとを騙しやがってッ!」

漢青年は、壊れた天井の間から大空を見あげると、そこには碧い大空のかわりに、もう一層の天井があって、この二つの天井の間に燭力の強い電球がいくつも点いているのが見えた。ああ、この偽瞞にみちたインチキ日光に、青年は幾日幾月を憧れたことだったろう。

彼は一つ肯くと素早く、西湖を望む窓辺に駈けより、重い花壜を※止となげつけた。ガタリという物音がして、西湖の空のあたりが、二つに裂けて倒れた。これは、近視眼の漢青年を利用したパノラマでしかなかったことが暴露されたのだった。