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せいこのしじん

西湖の屍人

海野 十三

「新青年」博文館、1932(昭和7)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,487 字 · 39 页

青空文庫

外には、どうやら喊声があがっているような気配だった。

だが、どうしたのか、孫も王も、それからマリ子も上ってくる様子がなかった。漢青年は、片手にハンマーを掴むとヒラリと寝台の上に飛びあがり、やッと声をかけると、天井裏にとびついた。彼の全身にはエネルギーが、はちきれるように溢れているのが感ぜられた。

彼の手に握られたハンマーは、天井板を木葉微塵に砕いていった。彼は勢いにまかせ、ドンドン上に向って出ていった。

壁土のようなものがバラバラと落ち、ガラガラと屋根瓦が墜落すると、そのあとから、冷え冷えとする夜気が入ってきた。漢青年はその孔からヒラリと外に飛び出したのだった。

「おお、これは」

それは見覚えのある銀座裏の袋小路に相違なかった。彼の立っているのは、カフェ・ドラゴンとお濠との間にある日本建の二階家の屋根だった。ハンマーで打ちぬいて来たのは、一部がとなりの煙突にぬける換気孔だった。それは漢青年をして、杭州にある気持を抱かせるについて、二階家の中に建築した彼の密閉室の換気を行う装置だった。

しかし、いつもの夜の銀座裏と違うところがあった。

それは、家の周囲に、幾千人の群集が集っていて、ワッワッと四方へ波のように動いていることだった。