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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
山川方夫『親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:菊、トンボの死、ロンリー・マン、愛の終り、赤い手帖、暑くない夏、あるドライブ、恐怖の正体、蒐集、ジャンの新盆、博士の目、はやい秋、非情な男、メリイ・クリスマス。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 67,486 字 · 144 页
博士の目
私がマックス・プランツ研究所にロレンス博士をたずねたのは、数年前の早春のある日である。たまたま、近くの大学で国際動物学会が開催され、わざわざ日本から参加した私は、高名な博士に逢える機会を逃したくなかったのだ。博士は、動物本能の――正確には、動物の内因性行動に関しての、世界的な権威である。たぶん、博士の名を知らない心理学者、ことに動物心理学者はいないだろう。
だが、そのとき私の印象にもっとも強くのこったのは、博士の目である。それは、茶色がかった明るく澄んだ色だったが、その奥にやさしく茫漠としたひろがりを感じさせて、すべての人びとをその底に引きずりこまずにはおかぬような、奇妙な深いものをたたえた目なのである。
ロレンス博士は、当時六十二歳、あたたかな大きな掌をもった老人で、遠来の私をこころよく迎えてくれた。学会で知り合った米国人の教授が通知してくれたらしく、博士は一人で研究所の門によりかかって私を待っていてくれたのである。
一見、田舎の村長さんみたいな、銀色の山羊鬚の生えた朴訥な風貌だが、隆い鼻、ひろい額は、さすがに世界的な大学者の品位をそなえていた。