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おやかたコブセ
親方コブセ
金 史良
「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页
X市在住土工達の親方コブセの噂はかねがね耳にはさんでいたが、私がじかに彼と会ったのは、金鵄がまだ九銭から十銭になる直前だから、ついこの間のことである。それは同市の会社に勤めているO君から、「来る日曜はこの港市八千余の虫やイスラム教徒達の運動会である。万障繰合せ一度御来参の程を……」云々と誘って来たので、「ではこの虫も是非参加させて頂き度く」云々と返事を出して、勇躍出向いて行った時のことだった。虫やイスラム教徒達というのは、私が以前に芝浦飯場界隈の或る奇妙な老人を小説に書いた際、そういうたとえ方をしたのを思い出し、O君が面白半分そう書いて来たまでのことで、云うまでもなくわが朝鮮移住民達のことを指している。
さてその日X市に着いたのが、約束より一時間余も遅れたため、ついにO君と駅で会えず、仕方なく私はバスで彼の住んでいる××町二丁目へ出掛けた。とはいえ、下りたとたんに少々間誤ついてしまった。何故ならそこは荒波打ち騒ぐ埋立ての水際で、例の如くわがイスラム教徒達の掘立小屋やトタン囲いの小屋がごてごてと埋まっていたが、O君は大学も出た人の筈、この部落の住人ではなさそうであるから。