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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

部落前あたりの路傍で子供達が縄飛びをし、朝鮮服の下に下駄をつっかけた婦達が路地の中をうろうろ動き廻っていた。暫し佇んだ挙句、彼女達にでも訊いてみようと足を運び出した時、急に後の方で何やら大きな喧嘩声が上った。驚いて振り返ってみると、煙草屋の中で四十男の主人と一人の小男が盛んに罵り合いをしている。どうしたのだろうと不審に思ったが、一つここで煙草も買うついでにO君の家も訊いてやれと、のこのこはいって行った。しかし足を踏み入れるなり、私はおやおやと思った。お客は私の背丈の丁度半分位しかない佝僂男で、大きな背瘤を揺り蠢かしながら引掻かんばかりの権幕で主人に喰ってかかっているが、それが一見して親方コブセに相違ないと思われたからである。コブセというのは朝鮮語での佝僂のことで、噂に聞いていた通り年も二十八九そこらのようだし、声だって噂にたがわず薄気味悪い程底力のこもっただみ声だった。

「やい、手前が課長だろうが、部長だろうが、班長だろうが、こちとら知ったことかえ! 一体手前の商売は何だちゅうんだよ?」

「煙草屋だ」と、主人はコブセの振り浴びせる手を避けようと、しきりに身を反らしながら唸った。