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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

すると今まで丸い体の中に小さな首を埋めてちょこなんと坐っていた親方は、突然二三尺いざり出て、「一寸待った」と手を上げ、持前のだみ声で叫んだそうである。「はるばる私のために来たのだから、兎に角××××××××、明日冷静に定めようじゃねえか」とうとうそういうことになってその夜が明け、朝方、仲人がひょこひょこ首を出し、「おかみさん、やはり今日郷土に帰りやすかね」と質ねたところ、彼女はううんと首を振ったそうで、このことからみただけでも、親方コブセがいかに凡人でないかを知ることが出来るというのだった。私はそのことを思い出して、ひとりにやにやとわらい続けた。こういういささか品よからぬ話の真偽は別として、先刻の煙草屋でのことや、又はあの体でいながら夢中になって踊り得るところからすれば、いかにも彼としてやりかねないことだと感心しながら。――

「え、そうかい? じゃ釣銭のことでだろう? 先刻そんな話が出た時またそそくさと抜け出す様子が、どうせそうだろうと思ったよ。あれで実はあの煙草屋の娘に熱烈な恋をしていたんだがね。娘の親父は何でも昔、県の課長までしたそうで、今は隣組の班長だが、一時は本気で二人のことを心配していたという話だよ。