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おやかたコブセ

親方コブセ

金 史良

「新潮 通卷四百四十四號(一月號)」新潮社、1942(昭和17)年1942(昭和17)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,006 字 · 16 页

青空文庫

要するに自分だって歴とした一人前だという矜持を持っているからね。一人前どころか、今やっと二十九歳の若年で、しかもあんな体してさ、配下に手足の如く動く土工を三百名程も抱えているんだよ。……まあ干しな。これもあの親方が手に入れた密造酒だよ。うまいだろう。さあ、後来三杯だ」と云って濁白をつぎながら、「オルシグ、ゾータ、ゾーチ」と、歌の音頭を取った。

私も愉快になって酒の酌器を重ね、又久し振りにありついた臓物に舌鼓を打った。その中に方々から男達が真中へ踊り出て乱舞となり、唄声は一層悲痛な調を帯びて来た。

万畳の青山彷わんも

誰が一人ぞわれを迎えん

翼ある鶴とならば

君が許にも飛ばんに

山は畳々千峯をなし

水は滄波万頃なり

「兎に角あれはこのX市のイスラム教徒達にはなくてならぬ男だよ。厄介な問題はあれが出れば大抵うまく行くんだから、全く不思議なもんさ」と、O君は又囁き出した。「ところであのコブセ親方のわらいには十二通りあるそうだよ。怒った時の三通りと、満足な時の三通りと、悲しい時の三通りと、それから寝る前のと、寝顔でのと、起きてからのと各々一通り、これで合計十二通りなんだがね、そら今踊りながらキングコングみたいにわらっているだろう。