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かいせつ(『ふうちそう』)
解説(『風知草』)
宮本 百合子
「風知草」文芸春秋選書、文芸春秋新社、1949(昭和24)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,966 字 · 24 页
作者はそのとき、思わずああ! と立ち上って、殺されなかった! とささやいた。一年間の留置場生活の内容は、完全に遮断されている妻には一切しらされなかった。宮本の母さえも、警視庁で命ぜられたとおり自分が息子の顕治に面会した場所や健康状態については、沈黙を守っているという有様であった。
さかのぼって考えれば一九三一年以来、はじめて、小説にうちはまってゆけるゆとりが作者の心に生じた。また一九三二年から前後三回に通計十ヵ月ちかい警察の留置場での生活を経験しなければならなかったこともそのころプロレタリア作家としてより深い階級的実感をもたらした。
宮本顕治があのように不自由して獄外に生活していたころ着手して、未完成のままにおかれた「乳房」を(題はまだつけられていなかったのだけれども)宮本が生きて、これから先何年もそこですごさなければならない見当さえつかない未決にまわった記念のために、ちゃんとした小説に書き上げたいと思う熱意があった。そのために一ヵ月余、継続的に仕事をした。ある部分は数度かき直された。そして「乳房」と題をつけられ、中央公論四月号にけいさいされた。