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ことばのふしぎ
言葉の不思議
寺田 寅彦
「鉄塔」1932(昭和7)年12月、1933(昭和8)年4月、7月、8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,114 字 · 23 页
また蘭領インドでは「店」が toko である。
マレイの理髪師は tukang chukor また tukang gunting である。
アラビアでは「店」が dukkan, ペルシアでも dukan である。ペルシアの床屋さんは dallak である。
ギリシアで剃るのは xurein でわが suri に通じる。髪を切る意味の cheirein は「切る」「刈る」に通じる。
Skt. kshura は剃刀。krit は切るであるとすると不思議はない。
おもしろいことは、土佐で自分の子供の時代に、紙鳶の競揚をやる際に、敵の紙鳶糸を切る目的で、自分の糸の途中に木の枝へ剃刀の刃をつけたものを取り付ける。この刃物を「シューライ」と名づける。これは前記のサンスクリトの「クシューラ」とよく似ている。これはたしかに不思議である。
床屋も不思議だがハタゴヤもなぜ旅館だかわからない。
ギリシアの宿屋が pandocheion でいくらか似ているのはおもしろい。パドケヤとハタゴヤである。pan と dechomai, すなわちだれでも接待する意だそうである。衆生を済度する仏がホトケであるのは偶然の洒落である。