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うたせてやらぬかたきうち
討たせてやらぬ敵討
長谷川 伸
「歌舞伎 秋季臨時増刊」歌舞伎出版部、1925(大正14)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,752 字 · 22 页
それに訪れるとしても帰途でござるから、沙汰なしに願いたい」
「あい、黙っておりましょう」
とその人はいったが、却って念を押されたために、宮内にそのことを知らせた。
宮内は蒼白い顔を、ひきつらせて笑った。知らせてくれた男には、惜しげもなく品物をくれてやった。その後で老僕を呼んでそわそわといいつけた。
「予て買ってあった柴を、この家のめぐりへ搬び出してくれ、わしも手伝うから」
「わし一人でやります、あすまでかかれば、一本残らず搬び出せますから」
「いやそう悠々とはしておられぬのじゃ、ちと思い立ったことがあるのでな」
「はあ、それにしても、柴を持出して、どうするのでござりますのう」
「今にわかる、面白いことなのじゃ」
主従二人は、精を出して買い貯えた夥しい柴を、家の四方へ積んだ。
「これでよい、思いの外に早く片づいた、それからのう、今にわしを尋ねて浪人夫婦が参るはずじゃが、お前は門の前の、あの濠の向うにいて宮内は只今外出しているが、直ぐ戻ってくるから待っていてくれといえ、いいか、濠のところでいうのじゃぞ、あれから内へは、わしがよいといわぬ間は、なんとしても入れてはならぬ――それから、予てくれるといっておいた物は、後の畑に出しておくから、後にとるがよい」