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はなしのたね

話の種

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,082 字 · 64 页

青空文庫

活動写真を見て遺憾に思う事はこれに天然の色彩の欠けている一事である。しかるに近頃アルバート・スミスという人が天然色の活動写真を発明してこの欠点を補うに到った。尤も以前にアイヴスという人が三色写真を応用して三色の活動写真を一つの障子に重ね映じた事はあったが、何分にも三個の器械を合せ用いるには種々の困難があって到底広く実用に適するに至らず、そのままになっていたのである。しかるに今度スミス氏の発明したものでは、たた一つの幻灯器に一枚の長いフィルムを使って天然色を現すのである。その法は先ず実物の刻々の写真を感光膜に写す際、交互に赤と緑の障子を使って実物の赤い色ばかり撮ったものと緑色のみ撮ったものを交番に連ねる。かくして得たフィルムを普通の活動幻灯器で写し出し、同時にフィルムの後で赤と緑の膜を張った円板を廻転し、赤の光で撮った写真の出る時は赤の膜が来るように、緑の写真には緑の膜が出るようにすればよい。さすれば二色の写真が迅速に引続いて交互に現れるから、眼には丁度二色の写真を重ねて見るとほとんど同じ結果になり、従ってほぼ天然色に近いものが現れるのである。従来の三色写真に対しただ二色をもって如何なる程度まで天然色を模する事が出来るかは多少疑問であるが、とにかく相応の好結果を得たと伝えられている。