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にんしきろんとはなにか
認識論とは何か
戸坂 潤
「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页
論者側の宗教的体験の欠乏とか、人格の卑しさとかに、宗教否定の原因が発見されるのを常とする。だが、そう云うなら逆に、思わせぶりな宗教擁護こそは、認識徹底力の欠乏の遁辞であり、文化的俗物の常套手段である、と云うべきだろう。之は人生に於ける最も卑しいものでさえあろう。――だが私は今所謂宗教批判を当面の目的としているのではない。文化の諸領域を貫いている或る一つの病理現象を指摘するために、文学と並べて宗教をも問題としたのだ。それはこうである。
文学・哲学・などを中心として発生している一つの認識論上の誤謬、虚偽思想を、私は文学主義と呼ぼうと思う。之は文学中心主義や文学至上主義などのことではなくて、科学的カテゴリー体系と独立した何等かの文学的カテゴリーの体系の如きが厳存するという想定から出発する一切の思想のことだ。こうした想定が認識論上許すことの出来なかった所以は、すでにさき程述べた。にも拘らずこの文化的病理現象は、文化の思想的体位の低下と共に、伝染力を得て来るものだ。純文学などが文芸の垣をのり越えて評論や政論の世界にさ迷い出る時、この症状は誰の目にもあまるだろう。