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にんしきろんとはなにか

認識論とは何か

戸坂 潤

「認識論」戸坂潤、山岸辰蔵、三笠書房、1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,432 字 · 116 页

青空文庫

だが今まで特に注目して来たのは、認識に於ける云わば思想的な側面であった。処が認識には云わば風俗的な側面もあったことを忘れてはならない。認識に於ける風俗の役割を注目するのでなければ、実は充分に広範に認識に於ける思想的側面さえ理解することが出来ないだろう。認識と風俗との関係を見逃して、認識を専ら単なる思想との関係に於てだけ見ようとするのは、認識を科学に於ける理論的認識に制限するマンネリズムと五十歩百歩の処にあるもので、認識の社会的実在性を把握するに欠ける処があるだろう。

思想と風俗との関係、之は最近文芸評論などで重大問題化して来ているが、この関係は風俗を認識の問題として捉えるのに、恰好であるように見える。風俗は認識論上の問題とされる時、初めて本当に文化上の意義をみずから知ることが出来るのだ。そうしないと、風俗は文化の大きな要因であると見做されながら、なぜそれがそうなのか、どうしても判らないだろうと思う。風俗と思想・風俗と文化・を結びつけるものは、認識という観念だ。

文学的認識に於ける風俗の役割は、よく注目されている。だが風俗小説などと呼んで片づけられる場合には、風俗はつまり文学的認識の内容として重んじられていない時である。