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ごろのろんり

語呂の論理

中谷 宇吉郎

「中央公論」1938(昭和13)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,587 字 · 14 页

青空文庫

それで学会で、これらの二系統の論文が並んで発表された時には、勿論盛な討論が行われた。或る理由でその席上に連っていた私は、その方面とはまるで専門ちがいなので極めて暢気に構えて、その討論を聞いて面白がっていた。その中にはこういうのもあった。「陰イオンが沈静的に働くということは、既に臨床的にも沢山の例について確証されている。これは実験的の事実である。それが事実とすれば、陽イオンがその反対に、興奮的に作用するということもまた疑う余地がない」という議論が出て来たのである。これなどは、正しく語呂の論理の適例であろう。もっともこういう立派な学会での討論を「雪中虫無んや」と内容的に同じものというのでは決してないが、論理の形式が同型のものであることは認められるであろう。勿論、実際は陰イオンが沈静的に働き、陽イオンが興奮的に作用するという研究結果を得られて、その事実を発表しようとされたのであろうが、それを聴衆に納得させようとした時に、不用意のうちに、われわれの祖先の持っていた表現形式が出て来たのであろう。こういう風に見ると、語呂の論理は日本人の頭の奥底にかなり強い一つの思想形式として今もなお残っているものと見るべきであろう。