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どくしょとちょしょ
読書と著書
矢内原 忠雄
「図書」岩波書店、1940(昭和15)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,828 字 · 8 页
その点では、聖書の中には厳しき時勢の圧迫の下に著述せられたものを含むことが、我らの注意を惹く。(例えば旧約のダニエル書、新約のヨハネ黙示録)
『余の尊敬する人物』という、私の文字通りの小著が、最近岩波新書として出た。之を『神の国』や『国富論』と比較するのは、余りに大小の差が大きく、おかしくて話にもならないが、少し紙数が余ったから手前味噌をならべることにしよう。
『余の尊敬する人物』はエレミヤ・日蓮・リンコーン・新渡戸博士の四人を含んで居る。初の二人は預言者型の人物であり、後の二人は善き意味の常識家型の人物である。而して私の尊敬する点として、この四人に共通する性格は次の四つである。
(一)真理を愛したこと。
(二)誠実であったこと。
(三)平民的であったこと。
(四)欠点ある人物であったこと。
この最後の点については少しく説明を要するであろう。私は欠点のなき人物、若しくは欠点なき人物となることを理想とする如き人物を、尊敬する気になれない。そのような人物は、第一おもしろくない。又親しめない。加之、大体偽善者であると思って間違ないのである。欠点のある人間、若しくは欠点をつつまずに出す人間は、少くとも正直である。