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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

詩や歌の方面では、その頃の青年の多くがそうであったように、私も土井晩翠の『天地有情』を、その中のいくつかを暗誦し得るまでに読んだ。『藤村詩集』もよく読んだが、私の好きであったのは何よりも北原白秋の『邪宗門』や『思い出』であった。今も白秋の詩は私の好きなものの一つである。三木露風は姓が同じであるので、親戚ではないかとよくきかれることがある。そうではないが、露風も竜野の人なので、その名は中学時代から親しんでいた。いったい三木という姓は私の地方には多く、播州三木城の別所氏が豊臣秀吉に滅ぼされた時、家臣たちが亡命して身を晦ますために元の姓を秘してその土地の名をとり三木と称したのに始まると伝えられている。中学の頃には『廃園』、『寂しき曙』の中の露風の詩を愛誦したが、トラピスト修道院に入ってからのこの人の詩はあまり見ていない。歌ではやはり白秋の作品が最も好きであった。吉井勇の歌も好んで読んだ。歌といえば、私はその時分かなり熱心に稽古したことがあり、竜野中学の校友会雑誌には当時私の作った歌がいくつか残っているはずであるが、作歌の上で特に影響を受けたのは、その時代の多くの青年に普通であったように、若山牧水であったであろうか。