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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

しかしその頃、私が学園で平和な生活を送っている間に、外の社会では大きな変動が始まっていた。あの第一次世界戦争を機会として日本の資本主義は著しい発展を遂げたが、私の大学を卒業した大正九年は、それが未曽有の大恐慌に見舞われた年として記憶される年である。このような変化に応じて思想界にも種々新しい現象が現われた。大正七年の末、東大には新人会という団体が出来た。『改造』――すでにこの名が当時の社会にとって象徴的である――が創刊されたのは大正八年のことであったと思う。同じ年にまた長谷川如是閑、大山郁夫氏らの『我等』が創刊されている。主として『中央公論』によった吉野作造博士の活動が注目された。これらの雑誌は私も毎月見ていたので、ある大きな波の動きが私にもひしひし感じられた。京都はまだ比較的静かであったが、『貧乏物語』で有名になられた河上肇博士が次第に学生たちの注意を集めていた。

このような動きに対して私は無関心ではなかったが、その中に入ってゆく気は生じなかった。また一灯園や「新しい村」の運動にも十分に興味がもてなかった。私はなお数年間、いわば嵐の前の静かな時を過したのである。