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どくしょへんれき

読書遍歴

三木 清

「文芸」1941(昭和16)年6月~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,120 字 · 72 页

青空文庫

、ラ・ブリュイエールの『カラクテール』等々を集め始めた。ヴィネの『十六、七世紀のモラリスト』を読んで、いろいろ刺戟を受けた。私の関心の中心はやはりパスカルであった。そうだ、パスカルについて書いてみようと私は思い立ったのである。マールブルクにおけるキェルケゴール、ニーチェ、ドストイェフスキー、バルト、アウグスティヌス、等々の読書が今は活きてくるように感じた。ストロウスキーの『パスカル』、ブトルーの『パスカル』等々の文献を集めて読み始めた。『パンセ』は私の枕頭の書となった。夜ふけて静かにこの書を読んでいると、いいしれぬ孤独と寂寥の中にあって、ひとりでに涙が流れてくることもしばしばあった。原稿用紙を持っていなかったので、洋罫紙に向って私は先ず「パスカルにおける人間の分析」という論文を書いた。かようなものが哲学の論文として受取られるかどうかについて不安を感じながら、私はそれを『思想』に送った。そしてさらに続けて私のパスカル論を書いていった。こうして出来上ったのが『パスカルにおける人間の研究』であり、大正十五年に私の処女作として出版されるようになった。その中の最後の一章は、日本へ帰ってきてから京都で書いたものであるが、他の部分はパリの下宿で出来たものである。