轻松读懂日语经典作品
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だれもしらぬ
誰も知らぬ
「若草」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,123 字 · 14 页
いまはもう、代がかわって芹川さんのお兄さんが、当主となって朝から晩まで一生懸命に働いて居ります。おかみさんも、仲々の働き者らしく、いつも帳場に坐って電話の注文を伺っては、てきぱき小僧さんたちに用事を言いつけて居ります。私とお友達だった芹川さんは、女学校を出て三年目に、もういい人を見つけてお嫁に行ってしまいました。いまは何でも朝鮮の京城とやらに居られるようでございます。もう、二十年ちかくも逢いません。旦那さまは、三田の義塾を出た綺麗なおかたでして、いま朝鮮の京城で、なんとかいう可成り大きな新聞社を経営して居られるとかいう話でございます。芹川さんと私とは、女学校を出てからも、交際をつづけて居りましたが、交際といっても、私のほうから芹川さんのお家へ遊びに行ったことは一度も無く、いつも芹川さんのほうから私を訪ねて来て、話題は、たいてい小説のことでございました。芹川さんは、学校に居た頃から漱石や蘆花のものを愛読していて、作文なども仲々大人びてお上手でしたが、私は、その方面は、さっぱりだめでございました。ちっとも興味を持てなかったのです。それでも、学校を出てからは、芹川さんのちょいちょい持って来て下さる小説本を、退屈まぎれに借りて読んでいるうちに、少しは小説の面白さも、わかって来たようでした。