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なぞのくびかざりじけん

謎の頸飾事件

山本 周五郎

「少年少女譚海」1931(昭和6)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,265 字 · 15 页

青空文庫

怪紳士秋山

樫田刑事が駈けつけて見ると、夫人の化粧室の外に、蒼白な顔をして例の秋山という紳士が突立っていた。刑事はちらと秋山を見たが、すぐに真暗な化粧室の中へ踏こんで、そして電灯のスイッチを捻った時、

「あっ、やられた※(感嘆符二つ、1-8-75)」

刑事は思わず叫んで立停った。

見よ、床の上には小間使が仰反に倒れて気絶している。そしてその傍には、既に空になった黒天鵞絨張の小筐が落ちていたではないか。

そこへ子爵はじめ客達がどやどやと駈けつけてきたので、刑事はあわてて叫んだ。

「子爵、重大な事件です、誰もこの化粧室へ入れないで下さい。また今夜のお客様は、御迷惑でも事件の解決するまで一歩も外へ出てはなりません、――それから」と刑事は慄えながら立っている客の秋山に、鋭い眼を向けながらいった。

「秋山氏はどうぞお入り下さい」

「僕も入れて頂きたいですね、名探偵閣下」そういう声がして、客達の間から、にやにや笑いながら龍介君があらわれた。刑事は不愉快そうに眉をよせたが、ぶっきら棒に、

「どうぞご随意に」といって、扉をぴっしり閉めた。

怪紳士秋山

化粧室には、樫田探偵と、子爵と、龍介君とが残った。