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おつきさまのうた

豊島与志雄童話集

豊島 与志雄

豊島与志雄『豊島与志雄童話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:お月様の唄、お山の爺さん、影法師、キンショキショキ、金の目銀の目、銀の笛と金の毛皮、コーカサスの禿鷹、正覚坊、狸のお祭り、手品師、天下一の馬、天狗の鼻、泥坊、天狗笑、長彦と丸彦、ひでり狐、不思議な帽子、彗星の話、街の少年、山の別荘の少年、夢の卵、雷神の珠。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 页

青空文庫

天下一の馬

一

ある田舎の山里に、甚兵衛という馬方がいました。至ってのんき者で、お金がある間はぶらぶら遊んでいまして、お金がなくなると働きます。仕事というのは、山から出る材木を、五里ばかり先の町へ運ぶのです。ぷーんと新しい木の香りがする丸や四角の材木を、丈夫な荷馬車に積み上げ、首のまわりに鈴をつけた黒馬にひかして、しゃんしゃんぱっかぱっか……と、朝早くから五里の街道を出かけて、夕方までには家へ帰って来ます。その馬がまた甚兵衛の自慢でした。何しろ馬方にとっては、馬が一番大切なものです。甚兵衛は親譲りの田畑を売り払って、その馬を買い取ったのでした。世に珍しいつやつやとした黒毛の若駒で、背も高く骨組みもたくましく、ひひんといなないて太い尾を打ち振りながら、ぱっかぱっかと街道を進む姿は、見るも勇ましいものでした。多くの馬方の馬のうちでも、一番立派なこの自分の黒馬を、甚兵衛は大層可愛がって大事にしていました。

冬のある晴れた日に、甚兵衛はいつもの通り、材木を荷馬車に積み黒馬にひかして、町へ出かけて行きました。お昼頃町へ着いて、材木を問屋の庭に下し、弁当を食べ馬にもかいばをやり、それから家へ帰りかけました。