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おつきさまのうた
豊島与志雄童話集
豊島 与志雄
豊島与志雄『豊島与志雄童話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:お月様の唄、お山の爺さん、影法師、キンショキショキ、金の目銀の目、銀の笛と金の毛皮、コーカサスの禿鷹、正覚坊、狸のお祭り、手品師、天下一の馬、天狗の鼻、泥坊、天狗笑、長彦と丸彦、ひでり狐、不思議な帽子、彗星の話、街の少年、山の別荘の少年、夢の卵、雷神の珠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,569 字 · 336 页
いかにもえらい学者のようでしたが、しかし、その鼻眼鏡のおくに光ってる目が、なんだか気味わるく思われました。
「ああ、この木でしたな」
学者はそこに立って、いっぱい咲いてる花を見あげました。それから、その根本にかがんで、鞄をひらきました。しばらくかちゃかちゃやってから、注射器をとりだしました。畳針のような大きな針がついていました。彼はしばらく、幹をなでていましたが、いきなり、ぶすりと針をさしました。
私はぞっとしました。私の手をにぎっていた正夫も、ぎくりとしました。桜の木は、私たちよりもいっそうびくりとふるえて、花がひらひらとちりました。
学者は反対の方にまわって、も一度、注射の針をぶすりとさしました。花がまたひらひらとちりました。学者は鞄から小さな白っぽいものをとりだして、注射のあとにはりつけました。よく見ると、それはブリキの板でした。
「これでよろしい」
学者はそういって、小父さんといっしょに戻っていきました。
私と正夫は、手をとりあったまま、そこに残っていました。なんだか心配でたまりませんでした。
いつのまにか、月の光がうすれて、東の空が白んできました。