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ぶたきちとヒョロこ

豚吉とヒョロ子

三鳥山人

「九州日報」1926(大正15)年1~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,498 字 · 111 页

青空文庫

は鳶口を持ったまま、又巡査さんはサーベルを握ったまま、あっちでもこっちでも、

「ハクションハクション」

「ヘキシンヘキシン」

「フクシンフクシン」

「ファークショファークショ」

「ハアーッホンハアーッホン」

と云ううちに、みんな引っくり返ってしまいました。

この様子を見た大勢の人々はいよいよ驚いてしまいました。

「これは大変だ。巡査さんや消防までも無茶先生に殺されそうだ。早く兵隊さんを呼んで来て、無茶先生を殺してもらおう」

と、大急ぎで兵隊さんを呼びにゆきました。

けれども、無茶先生や豚吉やヒョロ子は鼻の穴に綿をつめておりますから、香水の香いもわからなければ嚔も出しません。

「サア、この間に逃げるんだ」

と無茶先生は云いながら、横にあった金槌を取り上げて、横に寝ている馬の頭をコツンと一つなぐり付けますと、馬はパッと生き上りました。それを表に引き出して、細引で口縄をつけると、無茶先生が裸体のまま鞄を持って一番先に乗ります。そのあとからヒョロ子が豚吉を背負って馬の背中に這い上りますと、無茶先生が手綱を取って、

「ハイヨーッ」

と云うと、広い往来を一目散に逃げ出した。