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へんさいじょき
貢太郎見聞録
田中 貢太郎
田中貢太郎『貢太郎見聞録』。同一底本的分册已合并为一书。收入:変災序記、死体の匂い、日本天変地異記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,162 字 · 59 页
白石は庭に坑を鑿って書籍を入れ、畳を六七帖置いて、その上に土を厚くかけてあった。
「安政見聞誌」三冊を書いた仮名垣魯文のことも浮んで来た。魯文は湯島の妻恋下に住んでいた。魯文の住んでいた家は、二人の書肆が醵金して買ってくれたもので、間口九尺二間、奥行二間半、表の室の三畳敷は畳があったけれども、裏の方は根太板のままでそれに薄縁が処まばらに敷いてあった。ただその陋屋に立派な物は、表の格子戸と二階の物置へあがる大階子とであった。その格子戸は葭町の芸妓屋の払うたものを二分で買ったもので、階子はある料理屋の古であった。その魯文は、前年旗下の酒井某という者の妾の妹を妻にしていた。魯文のその時分の収入は、引札が作料一枚一朱、切付本五十丁の潤筆料が二分ということになっていた。そして、切付本の作者は魯文ということになっていて収入もかなりあったが、あればあるに従って、散じていたので、家はいつも苦しかった。
安政二年十月二日の夜は、通り二丁目の糸屋という書肆に頼まれた切付本の草稿がやっとできあがったので、妻はそれを持って往って、例によって二分の潤筆料をもらって来て、一分を地代の滞りに払い、一分で米を買って来て井戸端で磨いでいた。