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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」と二人連。

来れる二個の眷属は三界無宿の非人にて、魔道に籍ある屠犬児、鳩槃荼、舎闍を引従え、五尺に足らざる婦人ながら、殺気勃々天を衝きて、右の悪鬼に襖を開けさせ、左の夜叉に燭を持たせ、栄華の空より墜落して、火宅の苦患を嘗めつつある綾子を犯す乞食お丹、自堕落の態引替えて悪魔の風采凜々たり。

綾子は照射入れる燈火に射られて、呀と叫びて跳上りぬ。

屠犬児は衝と寄りて、綾子を捕えて押据えつ。お丹は襖を密閉して、夫人の前にむずと坐す。

綾子は頤を襟に埋めぬ。磨かぬ玉に垢着きて、清き襟脚曇を帯び、憂悶せる心の風雨に、艶なる姿の花萎みて、鬢の毛頬に乱懸り、俤太く窶れたり。

「綾子様、今私が改めて貴方に御尋ね申したいは、先月の末頃までこの邸に勤めました、お秀という小間使ね、あれはどこへ参りました。」

綾子は震えぬ。

お丹は屹と居直りて、「ああ、御返事はなりますまい、あの朝、大木戸伯と貴女とが一つ閨に居たところを、お秀がうっかり見着けたので、(綾子が、※(始め二重括弧、1-2-54)お言いでないよ※(終わり二重括弧、1-2-55)を繰返して小間使を警しめし、あの件なるものすなわちこれなり。