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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

)直ぐその晩小浜照子に刺された事は知っている。あの女は幽霊の真似をして人を威して慰むような剽軽者ではございません。必ず誰かが教唆して殺されるように仕組んだので、教唆したものは綾子様、大木戸伯と貴女の他には、私に心当りは無い。もっとも御自分ではなさらないで、お秀がいやを謂われぬ者を手先に使ってさせたでしょう。なぜだといえば、あの娘が活きている中は、二人の寝覚が悪いから、殺した、いや照子に殺させたに違いありません。ほんとうに許されないのは貴女です。人を殺しても守りたいほど、そんなに名誉が大切なら、なぜ不品行をなさるんです。年紀は若し、容色は佳し、なるほど操は守られますまい、可し情夫が千人あろうと、姦夫をなさろうと、それは貴女の御勝手だが、人殺をしても仁者と謂われ、盗人をしても善人と謂われて、肩幅広く居なさるのが、それが私は憎いんです。一体法網を潜るものは、お天道様が罰する筈だけれど、それも片手落な事もあって、北向の家はいつもいつも寒いようでは、あてになったもんじゃない。私が今晩唯今、貴女を罰してみせましょう。もとよりお秀を教唆して死地に陥したは貴女という推量ばかりで証拠は無いが、私は検事でもなく、判事でもございません、罪の軽重は論じない。