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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

「それではモルヒネ……お前目分量で飲ましてくれるか。」「お安い御用です、いつでも。」「そうしたらあの件を新聞へは出さないだろうね。」と念を推せば、思いも寄らぬ顔色にて、「いいえ、それはなりません。貴女が自殺をなさればまた一つ新らしい材料が出るから、実に愉快い。深川綾子はこういう次第で自殺をしたと、その理由を書添えて、早速通信をしてやります。(じゃむこう)がまた好い材料のある時は、嬉しそうに尾を掉って勢よく駈けるんですもの。」その心の冷かなること月を浴びたる霜のごとし、天下の熱血を氷化し得む。

綾子は再び独言ち、「それでは死んでも仕様がない。」ああ窮の極、自殺も出来ず、「これ。死……死んでも不可ないのか。」と最後の運命に問い試む。

お丹は世に最も深刻なる法官の音調もて、「死は万罪を償うという、甘い御都合には参りません。しかし御心中はお察し申す。それほど名誉が大切なら、なぜあの件を見られた当座に、飛かかって秀を殺してその手を返して咽候を切って、御自害をなさらなかった。外でもない、貴女の地位は罪を隠すことが出来るので、人殺をして今が今まで、賢夫人の名を保っていたのだ、それ其がごく宜しくない。