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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
」
護送されたる一列の貧民は、果報拙くして御扶持を頂くことを得ざりき。渠等は青山の僻地なる権田原にて放鳥となりぬ。「はいさようなら。」と巡査に別れて、お丹は一同とともに直ぐ目の下なる鮫ヶ橋の塒に帰れり。
午後四時頃、麹町永田町なる深川夫人の邸の庭へ、垣より潜入りたる茶褐色の犬あり。
「おや、どこから来たのだろう。」
と呟きつつ縁側に出でたるは、年紀の頃十六七、色白の丸ぽちゃにて可愛らしき女、髪は結立の銀杏返、綿銘仙の綿入を着て唐縮緬の帯御太鼓結、小間使といふ風なり。名を秀という、どこかで聞いたことのあるような。
「奥様御覧遊ばせ、お松どんちょいとお出よ。三太夫様、吉造様。」
と珍しからぬ一匹の犬に、夫人をはじめ、朋輩の女中、御家老より車夫に到るまで、家族のありたけ呼立てしが、返事をするもの一人も無し。
理あるかな、今宵は館に来客ありとて、饗応の支度、拭掃除、あるいは室の装飾に、いずれも忙殺されつつあり。
「ああ、誰も……」と前後を見廻し、屹と頷き、帯の間に秘持てる紙片を取出だしつ、くるくると紙捻にして、また左右に眼を配り、人のあらぬを見定めて。
「じゃむこう。