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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

」鉄蔵は真面目な顔「なに妾じゃねえて。」「はあ、あの女なら見世物に出すかも知れねえ、大方そうだろう。」「似寄の者さ。」と言懸けて少し猶予い「あのの、家の阿魔に犬の皮をの。」二人、「ええ――」と反返る。

鉄蔵は落着払い、「妙なものを拵えさしてそれをば見世物に出そうというのよ。」

「途方もねえ。」「恐そろしい。」

「勿論、女もなに泣面は掻かないで一昨日去った。」と煙管をこつこつ。

背後にすっくと突立つお丹、一部始終を聞きしなり。一声鋭く、「鉄、談話がある。奥へ来や。」

お丹突然、「畜生――」と一喝して長羅宇の煙管を押取り、火鉢の対面に割膝して坐りたる鉄の額を砕けよと一つ撲つ。

不意を啖って眼眩み「痛。」と傷を圧えしが、血を視て、「えッ非道いことを。」

梟眼赫とけば、お丹も顔色蒼ずみて真白き面に凄味を帯び、眉間に透る癇癪筋、星眼鋭く屹と睨み、「ム、悔しいか。人間ならくってかかんな、対手になろう。犬、畜生、人非人、四這になれ、尻尾を掉れ。」

詈る剣幕に胆を抜かれ、鉄蔵茫然とする処を飛かかって咽喉を扼し、「ええ、賭博に負けたか、食えねえか、それほど金子が欲くばな、盗賊をしな、人を殺せ、けだものに女を売るとは、野郎本気の沙汰じゃねえ、どれ、性根を着けてやろうよ。