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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
弟子に経綸を教うる人、家庭の教育整い難し。友の棺を送るもの、親類の不幸を弔わず、役所に出でては尻尾を振り、宅へ帰れば頭を振る。なお金銭におけるごとく、+-出入の相違は天地懸隔、月鼈雲泥、駿河台の老婦人もまたこの般の人なりき。
外部より刺戟を与えて、内心の悔悟をうながせしお丹は時分を見計いて、老婦人の前に出で相対して座を占めぬ。
「お初に御目に懸ります。」
老婦人はものをも言わず威儀を整え儼然たり。お丹はおもむろに説出だしぬ。「今晩は、貴女の御威勢にも憚りませずとんだ失礼をいたしました。しかし止むことを得ません次第、まあ御聞き下さいまし。実は先々月の中旬でござりました、夜更にお茶の水橋を通りまして、品格の好い、美麗い、お年紀の若い御婦人が身を投げようと遊ばす処を危くお止め申したのが、もし、御隠居様、貴女の御邸の光子様でございます。とかように申せば、なぜあの方が死のうとなすったかは貴女のお胸にございましょう。私も驚きました、御慈悲深い、お情深い、殊に仏学をお修めなすって、道徳抜群という風説の高い貴女のお嫁御があんなに薄命でお在なさろうとは、はい、夢にも思いはしませんでした。