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あかいかしゃ

赤い貨車

宮本 百合子

「改造」1928(昭和3)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页

青空文庫

大きいまるで見知らぬ都会の景色のなかでナースチャになじみのあるのは向日葵の種売りだけであった。朝のところどころの露店で、五カペイキのコップは向日葵を盛って厚ぼったく光った。

電車の窓の下をトラックが通る。トラックには三人労働者がのっていて、あっち向きに電車を追いぬきながら、窓にあるナースチャの顔を見つけ、互になにか云って笑った。

「おーい、こっちへ乗ってきな!」

怒鳴りつつ去った。紫と白の太い縞シャツを着た、若い男の笑顔を、ナースチャはいい男だったと思った。

樹の枝でつくった平べったい檻に鶏を沢山入れ、山のように積んだ荷馬車が行った。下積みの檻は、上からの重みでひずんで、一羽雄鶏が苦しそうに檻のすき間から首を外へ突出していた。

アンナ・リヴォーヴナの家では、どんな正餐を食べるのであろうか?

道普請だ。電車はのろのろ進む。……ナースチャはなんだかちょっとぼんやりした。

やがて教会の金の円屋根が光って見える広い通りへ出た。からりとして明るい往来の上に、一台柩馬車がいた。柩馬車は黒い。棺も黒い。花もなくひいて行く。後からプラトークをかぶった女が二人、年とった女を左右からかかえて歩いていた。