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あかいかしゃ
赤い貨車
宮本 百合子
「改造」1928(昭和3)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 35,168 字 · 71 页
無口な娘にでも別にやさしい言葉などかけることのない、顔と手の小さい寡婦だ。向いあいでナースチャは不恰好な子供服の裾かがりをやっている。うしろの板の羽目へ黄色い編下げの頭をくっつけ、相手によっかかるようにしてシューラがナースチャの肱を二本の指で締めつけた。シューラは退屈だ。シューラは茶色の服を着た骨っぽい肩をブルブル震わせ、ナースチャの顔色をうかがいつつ指に力を入れる。
「オイ! シューロチカ!」
「痛い?」
黙ってナースチャは肱を動かし、シューラの手をはらいのけた。シューラは蒼い顔でにやにや笑った。しばらく間をおきこんどは、おはじきでもするように首をまげ、狙いをつけ、ナースチャの肱の関節を弾きはじめた。これをやられるとなにかの機勢で腕がピーンと指の先までしびれ、心持が悪いと云ったらない。ナースチャは怒って悪態をついたり、追いまわしたりした。シューラは、だから退屈だとこのてを使うのだ。ナースチャは、裾かがりの上にうつ向いたまま激しくシューラを小突いた。
「およしったら! シューロチカ」
「なぜさ」
「きこえないの? お、よ、しっていってるのが」
ナースチャは、どんなにふざけたって笑ったって叱りもしない代り一緒に笑いもしない伯母の真向うに坐って、面白くなれないのだった。