轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

02 駈込み訴え

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,864 字 · 44 页

青空文庫

六

「いや」と登は頭を振った。

去定はいま夢からさめたような眼つきで、しげしげと登の顔を見まもり、なにか云いそうにしたが、憤然とした表情で口をつぐんだ、――まもなく岡野がおくにを伴れて来、終ったら知らせてくれと云って、おくにを置いて去っていった。

「こっちへ寄れ」と去定はおくにに云った、「おれは新出去定という医者で、おまえの父だという六助の治療をしていた者だ、おまえをここから出してやろうと思ってきたのだ、こっちへ寄って事情を話してくれ」

六

おくには三十二だといったが、どうしても四十以下にはみえなかった。ひと束ねにして藁蕊で結んでいる髪の毛は、半ば灰色で少しも艶がなく、痩せて骨ばった顔は蒼黒く、皮膚はかさかさに乾いているうえに皺だらけであった。――古切を継ぎ合わせて作った袷に、やはり継ぎはぎだらけの半幅帯をしめているが、それはどんな乞食よりもあさましくみじめにみえた。

去定のいきごみにもかかわらず、おくにはただぼうとした顔で、返辞もせずに坐っていた。底の抜けた徳利のようだな、と登は思った。躯の形はあるが中身はなにもない、ぬけがら、といったふうに感じられた。