轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

03 むじな長屋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,416 字 · 53 页

青空文庫

去定は片手の手首だけを振る、「乱世ならともかく、天下は泰平であり秩序もととのっている、幕府の権威は天下を押えてゆるがず、四民は怯々とその命にたがわざらんことを怖れている、かれらにはなんでもできるのだ、どんな無法なことでもどんなに残酷なことでも、幕府の名をもって公然と押しつけることができる、そして現にそのとおりやっているんだ」

「おれはごまかされないぞ」と去定は下唇をそらす、「おれは老いぼれのお人好しかもしれないが、こんなふうに人間を愚弄するやりかたに眼をつむってはいない、人間を愚弄し軽侮するような政治に、黙って頭をさげるほど老いぼれでもお人好しでもないんだ」

ほんの暫く独り言がとだえた。去定は大股の歩度をゆるめながら、片手で髯をごしごしとこすった。「無法には無法を」と去定は呟いた、「残酷には、残酷をだ、――無力な人間に絶望や苦痛を押しつけるやつには、絶望や苦痛がどんなものか味わわせてやらなければならない、そうじゃないか」

長いことそういう憎悪の独り言が続いた。去定の心は怒りと憎悪とで、どす黒く沸きたっているらしい。彼は幕府閣僚を呪い、ついには、そういう権力に対する自分の無能を呪った。