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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

03 むじな長屋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,416 字 · 53 页

青空文庫

しかしやがて、牛込御門をはいったとき、去定は力なく首を振り、右手の手首だけで、なにかをぬぐい去るような動作をした。

「いや、そうじゃない」と去定はくたびれたように呟いた、「おれにはそんなことはできない、おれはやっぱり老いぼれのお人好しだ、かれらも人間だということを信じよう、かれらの罪は真の能力がないのに権威の座についたことと、知らなければならないことを知らないところにある、かれらは」と去定はそこで口をへの字なりにひきむすんだ、「かれらはもっとも貧困であり、もっとも愚かな者より愚かで無知なのだ、かれらこそ憐れむべき人間どもなのだ」

薬籠を背負って、登といっしょに供をしていた竹造が、壱岐さまのお屋敷です、とうしろから吃りながら声をかけた。去定はびっくりしたように立停り、左手を見て、それから竹造を睨みつけた。竹造は困ったように登を見、登は門番小屋のほうへ歩みよっていった。

去定と登は脇玄関からあがっていった。

接待で茶菓のもてなしがあり、川本靱負という家老が挨拶に出た。去定は茶にも手をつけず、挨拶が終るとすぐに、「今日は薬礼をもらって帰るから御用意を願いたい」