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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

03 むじな長屋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,416 字 · 53 页

青空文庫

佐八のしたことが長いあいだ知れなかったのも、佐八が固く口止めをしたのと、貢がれた相手が次つぎに去ってしまったからだろう。五年まえに佐八が病んで倒れたとき、初めてそれが治兵衛の耳にはいった。

「私はそのときほどほどにしろと云ってやりました」と治兵衛は云った、「自分が病んで倒れるまで人にしてやるばかがあるか、ほどということを考えろ、ってどなりつけました」

佐八は済まないとあやまったそうである。彼を倒したのは労咳であったが、医者にかかろうともせず、十日ばかり寝ると、起きて仕事をはじめた。彼は治兵衛に向かって、これからは迷惑をかけないように気をつける、自分の身のことを考えるから、と約束したが、実際にはその約束を少しも守らなかった。――病状が思わしくないので、治兵衛がむりに去定の診察を求めたところ、去定から厳重な養生を命じられた。

「ところがです」と治兵衛は組んだ腕をとき、両手を膝へ突き立てながら云った、「つい四五日まえにわかったんですが、相変らず人に貢いでいる、滋養になる物をこれこれと、新出先生から金をいただいているので、薬といっしょにきちんきちんと嬶に届けさせました、いちどにやっては安心ができないので、一日分ずつ届けさせたんです、これなら大丈夫だろうと思ったんですが、――聞いてみるとそれも人にやっていたんです、米