轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

03 むじな長屋

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,416 字 · 53 页

青空文庫

と登は思った。いつか、去定は生命力と医術について、こういう意味のことを云った。或る個躰は病気を克服するが、他の個躰は負けて倒れる。医者はその症状と経過を認めることができるし、生命力の強い個躰には多少の助力をすることもできる、だがそれ以上の能力はない。また、医術がもっと進歩すれば変ってくるかもしれないが、それでも個躰のもっている生命力を凌ぐことはできないだろう、というのであった。

「医術ほどなさけないものはない、と云ったな」登は茶を啜りながら呟いた、「――医者をながくやっていればいるほど、医術というものがどんなに無力かということがわかる、そんなふうに云っていた」

そう呟きながら、登は急に眼をあげた。彼は頭の中で、同時に幾つかのことを考えていたのである。佐八のことと、半太夫のことと、それから、留守にまさをが訪ねて来たということを。そのまさをのことが、とつぜんはっきりと意識の表面にうかびあがって来、彼はひどく鬱陶しい気分におそわれた。

食堂を出た登は、そのまま自分の部屋へはいった。するとまもなく半太夫が来て障子の向うから声をかけた。登は気乗りのしない声で、どうぞと答えた。