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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

04 三度目の正直

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,351 字 · 43 页

青空文庫

二

たよ」

二

翌日、登はまだ暗いうちに養生所を出た。

去定の供をしているあいだに、足のほうもかなり達者になり、佐久間町へ着いたときには、藤吉はまだ家で飯を喰べていた。登はおちよに藤吉を戸口まで呼んでもらい、去定から命ぜられたことを告げた。

「猪之はまだ寝ていますが」と云って、藤吉は頭を掻いた、詳しい話をするには、うちではちょっとまずいんですがね」

「仕事場へいってもいいよ」

「仕事は代ってもらえるんですが」藤吉は気の毒そうに云った、「頭梁に断われば代ってもらえるんですが、堀江までいって下さいますか」

「仕事を休むことはないだろう」

「話すならゆっくり話したいし、なに、いまの帳場はあっしでなくってもまにあうんです、じゃあちょっと飯を片づけちまいますから」

登は外へ出た。

そこは佐久間町四丁目で、うしろが神田川になっている。家は二戸建てだが、格子戸のある小ぢんまりした造りだし、隣り近所も似たようなしもたやが多く、下町にしては閑静な一画をなしていた。――出て来た藤吉は、着流しにひらぐけをしめ麻裏をはいていた。仕事は休むつもりらしい、待たせて済みません、と云って歩きだしたが、ふと思いついたように立停り、ちょっと見ておいてもらいたいものがあると、家の脇を裏へまわっていった。