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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

04 三度目の正直

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,351 字 · 43 页

青空文庫

裏にはもうひとかわ、神田川に面した家が並んでおり、こっちの家とのあいだに、幅九尺あまりの空地があった。そこは両方の家の勝手口が向き合っていて、井戸もあるし、手作りの棚に盆栽を飾ったり、竹垣をまわして、植木や花を育てていたりした。

「これを見て下さい」

藤吉は自分の家の勝手口のところで、そう云いながら、そこに並んでいる植木鉢を指さした。安物の素焼きの鉢が七つあり、それぞれなにか小さな苗木が植わっているが、登にはそれがなにを植えてあるのか、まったく見分けがつかなかった。

「猪之が植えたんですよ」と藤吉は勝手口のほうを気にしながら云った、「よく見て下さい、みんな逆さまです」

「逆さまとは」

「枝のほうを埋めて、根を上へ出してあるんです」

登はほうといった。なるほど、よく見ると鉢の土から出ているのは根である。もっともみな根を上にして植えてあり、それでなんの木かわからなかったのであった。

「どうしてこんな植えかたをしたんだ」

「それはあとで話します」と云って藤吉は歩きだした、「いきましょうか」

あたらし橋を渡って、日本橋のほうへ向かいながら、藤吉は話し始めた。

猪之は藤吉より二つ年下で、十二歳のとき、日本橋堀江の「大政」