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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

兄夫婦の間には、しばらく白々しい沈黙が過ぎて行きました。

「あなた、このごろ勝見の様子が、どこか変じゃありませんこと?」

「笛吹川が亡くなったので、気を落しているのだろう」

「そうでしょうか。勝見が独りでいるところを横から見ていますと、何かに憑かれているようなんですよ。話をして見ても、言語のはっきりしている割合に、どことなく陰険なんです。それに勝見はこんな顔をしていたかしらと思うこともあるのです。あの眼。このごろの勝見の眼は、死人の腐肉を喰べた人間の眼ですよ」

「そりゃ、よくないね。君は神経衰弱にかかっているようだよ。養生しなくちゃ……」

「神経衰弱なんでしょうか?……でも気味が悪いんですもの。わたしもあの男に喰べられてしまうかも知れないわ」

「馬鹿なことを言っちゃいけない。だからこれからは、麻雀競技会を時々開いて大勢の人に来て貰うのさ。今に、親類のように親しくなる人が三人や四人は出来るよ」

「勝見に暇をやることはいけなくって?」

「ウム。いけないこともないが、時期がある。つまらないことを喋られてもいやだからな」

「私はもうこの館が、いやになったわ」

兄は毎日を家の中に居て、別にすることなく暮していました。