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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

その結果は、壁の上に鉛筆で記したとおりで、しかもそれが綾子夫人以外の誰でもないことが明白になりました」赤星探偵はこう言って、ホッと吐息を洩したのです。

「では姉が……」百合子は愕きのために目を大きく瞠って叫ぶように申しました。「姉が兄を殺したのでございますか」

「お嬢様、私たちの失敗は、そこにあるのです。ごらんなさい。綾子夫人の像から二寸ばかり離れた場所に、大きな手の跡がX線によって発見されています。これは丈太郎氏の右手なのです。綾子夫人を壁ぎわに押しつけたとき丈太郎氏の手は夫人の濡れた衣服をつかんでいたのでした。そのとき丈太郎氏は中毒のために力を失い、この壁の上にぬれた手をつくなり、バッタリ下に斃れてしまったのです。丈太郎氏の臨終は正に午後九時三分であると断言することが出来ます。周囲の状況から考えますと、綾子夫人は丈太郎氏のところへ、レモナーデを搬んで来たのです。丈太郎氏は九時二分過ぎに時報受信の実験をやり、やさしい夫人の捧げるレモナーデを手にとって一口に飲んだのでした。ところが丈太郎氏は忽ち身体に異常を覚え、これはてっきり綾子夫人が毒を仕掛けたレモナーデを飲ませたせいであると思い、忽ち夫人に飛びかかって壁際に押しつけはしたものの、其の時、中毒作用は丈太郎氏の心臓を止めてしまったのです。