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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
そしてたしかに彼は島に暮しています」
「では、家に居るのは本当の勝見ではなかったのですか、まア……。しかし一体あれは誰でございましたかしら」
「お嬢さんは勝見が笛吹川画伯の屍体に附き添い、赤耀館を出て行ったのを御存知ですか。あの時までの勝見伍策は、正真正銘の本人でした。あれから五日ほどのちに帰って来た勝見、そして、丈太郎氏の死後に暇を貰って行ったまでの勝見は、全く偽物なのです」
「まア偽せの勝見でしたか。ではもしや……」百合子は言葉のあとを濁して、恐ろしそうに身震いをしたのでありました。
「そうです。あれは笛吹川画伯の変装だったのです」
「それでは笛吹川さんは、あのとき亡くなったのでは無かったのですか。それが今日まで、どうして知れなかったのでございましょう。あたくし、一寸信じられませんの」
「笛吹川という男は、世にも恐ろしい殺人鬼です。あいつは殺人の興味ために、あらゆる努力と、あらゆる隠忍とを惜しまない奴でした。心臓麻痺で死んだと見せかけたのは、彼が印度の行者から教わり、古書の中を漁って研究した仮死法なのです。お通夜の夜、本物の勝見の手で彼奴はなんの苦もなく生きかえったのでした。