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ちょうかきんむ

超過勤務

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页

青空文庫

ことを、頭だけで知ったかぶりをするんだ、週刊誌はみんなつぶしちまわなければだめだ」

「頭だけ、ですって」少女は云った、「おじさんはあちしがなにも知らないって云うの、ほんとに」

少女は猫のようななめらかな動作で、彼にとびつき、両手で彼の首と頭をかかえると、唇と唇をぴったり合わせた。彼の鼻からむーという声がもれ、その手はいたずらに少女の躯を押しのけようとした。けれども、彼の首と頭をかかえた少女の腕には、意外なほどの力があり、どうもがいてものがれるすべはなかった。

「どう、おじさん」少女は唇を放して云い、すぐにまた唇を合わせた、「どんな気持」

彼は本気になって唇をもぎ放した。

「なんて娘だ」彼は少女を押しやった、「いいよ、少しぐらいなら貸してあげるから、もうふざけるのはよしてくれ」

「悪い気持でもないくせに、ふ」少女はコンパクトを出して、唇のルージュを直しながら彼にながし眼をくれた、「知らないのはおじさんじゃない、おじさんはいまのようなキス初めてでしょ、すぐわかっちゃったわ」

「ませたことを云うもんじゃない」彼は上着の内ポケットから札入を出し、中から紙幣を一枚ぬき出して云った、「口で云う