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ろじょう
路上
午炮响后,图书馆陷入诡异的寂静,大学生俊助埋头书海,时间随着指针流逝,但这份平静下似乎藏着什么在悄悄酝酿。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,539 字 · 87 页
その時彼女の小さな耳朶が、斜にさして来る日の光を受けて、仄かに赤く透いて見えた。俊助はそれを美しいと思った。
「先達は、あれからすぐに御帰りになって。」
辰子は俊助の顔へ瞳を返すと、人懐しい声でこう云った。
「ええ、一時間ばかりいて帰りました。」
「御宅はやはり本郷?」
「そうです。森川町。」
俊助は制服の隠しをさぐって、名刺を辰子の手へ渡した。渡す時向うの手を見ると、青玉を入れた金の指環が、細っそりとその小指を繞っていた。俊助はそれもまた美しいと思った。
「大学の正門前の横町です。その内に遊びにいらっしゃい。」
「難有う。いずれ初子さんとでも。」
辰子は名刺を帯の間へ挟んで、ほとんど聞えないような返事をした。
二人はまた口を噤んで、電車の音とも風の音ともつかない町の音に耳を傾けた。が、俊助はこの二度目の沈黙を、前のように息苦しくは感じなかった。むしろ彼はその沈黙の中に、ある安らかな幸福の存在さえも明かに意識していたのだった。
十六
俊助の下宿は本郷森川町でも、比較的閑静な一区劃にあった。それも京橋辺の酒屋の隠居所を、ある伝手から二階だけ貸して貰ったので、畳建具も世間並の下宿に比べると、遥に小綺麗に出来上っていた。