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おどるちへいせん

踊る地平線(下)

谷 譲次

谷譲次『踊る地平線(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線、踊る地平線。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 141,823 字 · 283 页

青空文庫

であり――だから、男振り自慢の巴里の床屋は、外観を急造して大ホテルへ乗り込み、「美術家」と自己登録していることであろうし、港の運送屋は貿易商と、ピアノの運搬人は音楽批評家と、安芝居の道具方は舞台装置家と、帽子の売子嬢は「頭部の専門家」と、自費出版の未亡人は詩人と、街路掃除夫は社会改良家と、踊り子は舞踏家と、郵便脚夫は官吏と、機関手は運輸業と、給仕は会社員と、売笑婦は「独立生計」と、めいめいその花文字のようなホテルの台帳の署名と一しょに、こういう触れ込みで押しまわっているかも知れないのだ―― The White Carnival ! St. Moritz !

とうとう私は、あのロジェル・エ・ギャレの本名は知らないのである。しかし、それでも私は、彼がオスロかどこか北方の首府に仕事と地位を持っている希臘の若い海軍武官であったことも、いつも小さな秤を携帯していて、それで注意深くフィリップ・モウリスの上等の刻み煙草を計って、自分で混ぜて、晩餐後のヴェランダで零下七度の外気へゆっくりと蒼い煙りを吹き出す習慣のあったことも、例の大陸朝飯を極度に排斥して、BEEFEXと焼き林檎と純白の食卓布に可笑しいほど固執していたことも、趣味として、部屋では深紅のガウンを着ていたことも、読んでいたバルビュスの作品よりも、実を言うと、