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おどるびじんぞう

踊る美人像

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,460 字 · 31 页

青空文庫

恋の敗残者

この姉思いの妹は、本人の糸子よりも神経を悩まして居るのでしょう。斯う話すうちにも、細そりした身体は痛々しく顫えて居ります。

「それは放って置けない、明日にでも私から、警視庁の花房君に話して、何んとかして貰いましょう。まあ、あまり心配しない方が宜いでしょう」

気休めと知りつつも、十次郎の口からはツイこんなお座なりが出ます。それほど相手の雪子は物怯えがして居たのです。

恋の敗残者

「新聞屋の先生、面白かったろう。ハッハッハハハハ」

斯う声をかけられて、足の勇は思わず立ちすくみました。後を尾けて来た相手に呼びかけられては、誰でも一寸面喰います。

「驚くなよ、わざわざ手紙で招待して、特別席からの活劇をお目にかけたんだ。遠慮することは無い。明日の新聞には、三段抜かなんかで頼むよ、『女優柳糸子、日比谷公園で身ぐるみ剥がる』なんていうのは。全く良い標題だぜ、ちと特種料を出しな――」

勇の前へヌッと片手を出したのは、言うまでもなく彫刻家丹波高一という落ち果てた姿です。

「尤も、亭主が女房を剥いだんだから、これは泥棒じゃないぜ。面喰って恐れ乍らと極めると、飛んだ恥を掻くかも知れない、念の為に申して置くがね――」